映画『遠い空の向こうに』は元NASAの技術者であるホーマー・ヒッカムが宇宙に携わる仕事に就くきっかけとなった体験をもとに作られた伝記映画です。
炭鉱の町に生まれたホーマーが美しい夜空を横切る人工衛星を目にしてからロケットを打ち上げるという夢を抱き父親に反対されながらも友人達と試行錯誤しながら実験を繰り返す。
最初は町の笑いものだった彼らだが決してあきらめないその姿に大人たちもいつしか心を動かされ自分たちの経験と知識を元に力を貸すようになる。
夢と希望、友情と家族の絆がテーマの感動の実話。
観終わった後の爽やかな感動がいつまでも胸に残っていてずっと余韻に浸っていたくなる。
日本でも中学三年生と高校一年生の英語の教科書に載るほどたくさんの人の支持を得た映画
◎『遠い空の向こうに』のあらすじ(ネタバレ)
◎『遠い空の向こうに』の感想
をご紹介したいと思います!
『遠い空の向こうに』あらすじ(ネタバレあり)
ーホーマーが抱いた夢ー
1957年10月4日。ソ連が人類初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功し軌道に乗せたとアメリカ政府が発表する。
陸軍ミサイル開発局の主任フォン・ブラウン博士はアメリカがソ連に続き直ちに人工衛星を打ち上げると宣言する。
「ソ連の衛星はアメリカでもその起動を肉眼で見ることができる。日の入り1時間後と日の出1時間前にアメリカの“10月の空”を横切るだろう。」
1957年10月5日。W.バージニア州、コールウッドの男たちはスポーツで奨学金をもらえなければ炭鉱の仕事に就くしかないほど石炭の需要で支えられている町だった。
ホーマー・ヒッカムの父、ジョン・ヒッカムもそんな炭鉱堀りに誇りを持ち人生の全てをかけホーマーにも炭鉱夫になることを望んでいた。
しかし、この町の炭鉱は10年前ほど石炭が取れなくなっていたため雇い主からはこの炭鉱の閉鎖は決定した、と言われていた。
スポーツがまるでダメなホーマーだったが父親と同じ道を歩む事になるのも嫌だった。
そんな時、ソ連が打ち上げた衛星スプートニクがコールウッドの上空を流れるのを見るため町中の人たちが夜空を見上げ待ち構える。
そしてスプートニクが夜空を走るのをホーマーも友人達と見ていた。
スプートニクを見てからホーマーはロケットに興味を持ち、自分で作って打ち上げたいと思うようになる。
まずはロケット花火30個分の火薬をプラモデルのロケットに詰め庭で試してみることに。
しかし打上るどころか火薬が爆発してしまい庭の塀を壊してしまい母のエルシー怒られる。
その後ホーマーはヴァンガード衛星の打ち上げに失敗した科学者フォン・ブラウン博士に自分もロケットの打ち上げに失敗したことと
“この町では誰もが上空より下界に興味があり、ロケット工学の資料が見つからず闇を手探りで歩く状態です”
と手紙で伝える。
ー化学マニアの友達ー
それでも諦められなかったホーマーはクラスメイトでみんなから変人扱いされていた科学マニアのクエンティンに声をかけロケットのことを歴史から全て教えてほしいとお願いする。
ロケットを打ち上げるにはそもそも火薬ではなく塩素酸カリウムと硫黄が必要だったというのを知ってホーマーはますますロケット作りにのめり込んでいく。
友人のロイ・リーとオデールにも協力してもらい
ホーマーの家の地下室を使って鉄パイプからロケットを作ろうとしたが溶接ができなかったため最も重要なノズル部分を作れずにいた。
そこでホーマーは知り合いのバイコフスキーに溶接をお願いすると「ジョンには内緒だぞ」と言って快くタダで引き受けてくれる。
ーロケットの発射ー
図面通りロケットが完成し、どこで飛ばすか相談していると担任のミス・ライリーから郡の科学コンテストに出場して優勝すれば全米大会に進んでアメリカ中の大学が奨学金を申し出てくる、という話を聞く。
大会出場を目指し、張り切るホーマー達はロケットに“オーク1号”と名付け、いざ飛ばしてみることに。
すると軌道が外れて炭鉱の方へと飛んでいってしまう。
急いで回収に向かうとロケットを手にしていたジョンに「会社の敷地内ではやるな!」と怒鳴られ仕方なく13キロ離れたスネークルートまで歩いて行かなければならなくなった。
そこまでするホーマーにロイ・リーとオデールは反発し仲間割れするがホーマーに「本気で炭鉱夫になりたいなら好きにすればいいさ」と言われ考え直す。
4人は荷物を抱え、ようやくスネークルートの空き地につくとそこを“ケープ・コールウッド”と名付け観測所や発射台を手作りする。
4人の行動は町のウワサになっておりみんなから笑いものにされ父のジョンも相変わらず反対していた。
なかなかロケットはまっすぐに家上がらず打ち上がらず、打ち上がってもロケット自体が爆発してしまう。
それを見た炭鉱の会社で働くレオンが金属の耐久性など色々アドバイスをくれる。
ある日ホーマーの兄のジムが冷やかしのためにみんなを連れケープコールウッドに集まっていた。
みんなが見てる中、ロケットを発射すると初めてまっすぐ上空へ爆発もすることなく打ち上がる。
ーロケットボーイズの解散ー
4人の“ロケットボーイズ”達は地元の記者からも取材を受け一躍有名人になるが、学校に警察が現れ先日起きた山火事の原因がホーマー達のロケットによるものではないかと疑われる。
回収できていないロケットもあったため何も言えず4人は逮捕されてしまう。
警察に4人の保護者が迎えに行くがホーマーとジョンが車の中からロイ・リーが継父に殴られているのを見つける。
そしてジョンは継父の胸ぐらを掴み「この子に傷をつけたら俺がお前を同じようにしてやる」と脅しロイ・リーを車に乗せ連れて帰る。
それからロケットボーイズはロケットの打ち上げ実験を断念。見張り小屋も燃やしてしまう。
ーミス・ライリーの言葉ー
その後、世話を焼いてくれていたバイコフスキーが炭鉱の事故で亡くなってしまい、ジョンも目を負傷し入院することになってしまう。
それを知ったホーマーはバイコフスキーがお守りにしていた金の番号札を持ち帰り、大学に進学が決まっていた兄に代わって自分が学校を辞めて炭坑夫として働くことを決める。
ホーマーの仕事ぶりを見て誇らしげなジョンだったがホーマーは内心ロケットへの思いを捨てきれずにいた。
そこへ母親から担任のミス・ライリーが病気であることを聞かされ彼女の家を訪ねると「自分の心に従って生きて欲しい。でもあなたがどんな道に進もうと私にとってあなたは誇らしい生徒よ」と励ましてくれる。
ー潔白の証明ー
ミス・ライリーの言葉に勇気づけられホーマーは数学を猛勉強し山火事の時に落ちたロケットの軌道を計算し落ちた場所を算出。そしてクエンティンとその場所に向かうと確かにそこにロケットは落ちていた。
警察に行き事情を話すと山火事の原因は軍の照明弾だとわかり、校長は郡の化学コンテストに出場するため復校の手続きをすると言ってくれる。
ー決裂する親子ー
郡の科学コンテストで見事グランプリをとり全米大会に行けることが決まったロケットボーイズ。
しかし交通費が賄えないと言う理由で大会の会場に行くのはホーマー1人だけになる。
炭鉱夫たちが会社への不満からストライキを起こしている中、ジョンは家で様子を伺っていた。
ホーマーが大会に行く準備をしていると外から誰かが発砲してくる。犯人はあのロイ・リーの継父だった。
父を心配するホーマーにジョンは自分の心配をしろと突き放す。
その態度に起こったホーマーはもう二度と戻らないと言って家を出て行く。
ー全米大会へー
1人で大会の会場があるインディアナポリスに向かったホーマーは一日目の展示会で来館者にロケットの説明をし手応えを感じていた。
しかし2日目に会場に行ってみると展示しておいたラバーズ・ノズルや誕生日に送られてきたフォン・ブラウン博士のサイン入り写真まで全て盗まれてしまっていた。
ロイ・リー達に電話したものの新しく作ろうにもストライキが原因で工場にすら入れない状態だった。
するとホーマーの母エルシーのもとにレオンがやってきてホーマーが困っていることを伝えにくる。
それを聞いたエルシーは夫のジョンにストライキを息子のために何とかしてほしい。でなければ家を出て行く、と泣いてお願いに来る。
始めは聞く耳を持たなかったジョンもエルシーの覚悟を見て炭坑夫仲間に掛け合い、なんとか工場を開けラバーズ・ノズルを作り直してもらう。
ジョンのおかげで大会最終日に間に合ったホーマーは「ありがとう、父さん」とつぶやく。
そしていよいよ優勝者の発表の時。
ホーマーはバイコフスキーの番号札をポケットから取り出し想いを馳せているとロケットボーイズ4人の名前が呼ばれる。
挨拶を終えステージを降りると大学関係者達から奨学金のことや祝福の言葉をかけられるが、その中にフォン・ブラウン博士もいたと後になって記者から聞かされる。
ヒーローとして帰ってきたホーマーを街の人々は暖かく迎え入れる。
ホーマーは入院していたミス・ライリーに真っ先に報告。すると「毎年新入生たちにホーマー達のことを自慢するわ」と言ってくれる。
ー父のようにー
そしてホーマーはラバーズ・ノズルのお礼を言いにジョンのもとに行き今日最後の打ち上げをするから見に来て欲しいと言うがジョンは仕事が忙しいと断る。
「ヒーロー(フォン・ブラウン)に会えてよかったな」と言うジョンに対しホーマーは「僕の目標は父さんみたいになることだよ。ブラウン博士は確かに偉大な科学者だけど僕にとってのヒーローじゃない」と言う。
ーロケットに思いを乗せてー
いよいよ最後のロケットを発射するとき、集まった町の人達にお世話になったお礼を言うホーマー。
亡くなったバイコフスキー、担任のミス・ライリー、レオン、そして母と父・・
言いかけたその時、来ないと言っていたジョンが目の前に現れる。
ホーマーは父に歩み寄り「誰かが押さないと飛ばないんだよね」とジョンにスイッチを手渡す。
そしてカウントダウン 3、2、1・・
ロケットは今までのどのロケットよりも高く飛んでいく。
その光景を町の人々や炭鉱夫たち、そしてミス・ライリーも見つめていた。
『遠い空の向こうに』感想
父親と息子がテーマになっている映画って結構ありますよね。
私が好きなイギリスの映画「リトルダンサー』も同じ炭鉱町で働く父とバレエダンサーに憧れる息子の話でした。
どちらの作品の父親も息子の夢が自分の人生とあまりにかけ離れたものだったため理解しようとさえしない、そもそも息子がしようとしていることがどんな世界のものなのか理解できないから賛成するのが怖かったのかもしれないです。
つまり息子がかわいいからこそ自分が守ってやれない世界に送り出したくないという愛から生まれた反応ではないでしょうか。
そしてどちらの作品も結局息子の夢のために父親が一肌脱ぐシーンがあり、これがまた涙を誘うんです。
あのお父さんが息子のためにここまでやってくれた・・と。
頑固でなかなか素直になれないと言うよりは自分の信念に従って息子を守ろうとしていたように見えました。
だから息子が本気だと分かったとき自分が間違っていたと気づくことができたんですね。
そしてホーマーの何度失敗しても反対されても笑いものにされても諦めなかったロケットへの想い。
親に反対されたから夢が叶わなかったなんて言い訳は通用しないんだなとこの映画を見て思いました。
あきらめない姿勢を見せなければ自分がどれほど本気なのか周りにはわかってもらえませんからね。
ホーマー達の行動力こそ賞賛に値します。
それに彼にここまでさせたスプートニクの影響ってすごいなと思いました。
私も時々明け方や夕暮れ時、ISS(宇宙ステーション)の光を見ることがありますが毎回感動するもののロケットを自分で飛ばしたいというような想いにまではさすがにならないですからね。
何がきっかけで人生が変わるかわからないものです。
そして一緒に夢を追い続けてくれた友人たち。
ロイ・リーやオデールにとって暇つぶしなところもはじめはあったかもしれませんが重い荷物を抱えてケープコールウッドまで毎日一緒に通ってくれる、そんな友達はなかなか作れないですよね。
クエンティンにいたっては彼がいなきゃロケットは作れなかったわけですから、彼がいたことほどホーマーにとっては何よりも幸運だったのではないでしょうか。
しかし反対にロイ・リー達のほうもホーマーのおかげでかけがえのない経験と知識を得られたわけですから、お互い様ですね。
そして応援してくれたバイコフスキーさんや担任のミス・ライリーの存在もホーマーのメンタルを支える上で重要な方達だったでしょう。
誰かが応援してくれているというだけで人って頑張れますもんね。
全米大会で優勝が発表されるときにホーマーがバイコフスキーさんの番号札を眺めているシーンにジーンときました。そして最後のロケットにミス・ライリーの名前を付けて飛ばすという配慮にも感動しました。
お世話になった人たちのことを決して忘れることがなく夢を実現させたホーマーの人柄に心打たれっぱなしの私でした。
そしてつくづく人は一人じゃ生きられないんだな、と思い知らされた作品でした。
『遠い空の向こうに』作品情報
公開 2000年(日本)
監督 ジョー・ジョンストン
原題 October Sky
原作者 ホーマー・ヒッカム
上映時間 108分
因みに原作者のホーマー・ヒッカムが書いた本のタイトルは『Rocket Boys』なんですが、
映画の原題『October Sky』のアナグラムになっています。
なんかシャレてますよね。
『遠い空の向こうに』監督やキャスト
監督 ジョー・ジョンストン
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1989年の『ミクロキッズ』で監督デビューしています。
その後『ジュマンジ』、『ジュラシック・パークⅢ』、『ウルフマン』、『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』などを監督。
監督業だけでなく視覚効果のデザイナーやイラストレーターも務めています。
ジェイク・ギレンホール(ホーマー役)
アメリカ人俳優。『遠い空の向こうに』は初主演作!2005年の『ブロークバックマウンテン』では同性愛者を演じてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた実力派。
『デイ・アフター・トゥモロー』、『プリズナーズ』、『ナイトクローラー』、『ライフ』、『ワイルドライフ』『スパイダーマン:ファー・フローム・ホーム』などたくさんの代表作があります。
お姉さんのマギーも女優、俳優のピーター・サースガードは義兄です。
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クリス・クーパー(ジョン役)
アメリカ人俳優 2002年の『アダプテーション』では今までのイメージを覆す役を演じ、アカデミー賞主演助演男優賞を受賞しています。
『評決のとき』、『大いなる遺産』、『モンタナの風に抱かれて』、『アメリアン・ビューティー』、『ボーン・アイデンティティ』、「シービスケット』、『シリアナ』など高く評価された作品に多く出演していて、2005年の『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』ではジェイク・ギレンホールと義理の親子で再共演しています。
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ローラ・ダーン(ミス・ライリー)
アメリカ人女優 2019年の『マリッジ・ストーリー』ではアカデミー賞助演女優賞を受賞しています。
『パーフェクト・ワールド』、『ジュラシック・パーク』『アイ・アム・サム』、「わたしに会うまでの1600キロ』、『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』『スターウォーズ/最後のジェダイ』などに出演。多くの大物俳優たちと共演しています。
お父さんのブルースとお母さんのダイアン・ラッドも俳優さんで夫はミュージシャンのベン・ハーパーです。
クリス・オーウェン(クエンティン役)
アメリカ人俳優 青春ものやコメディにほとんどが脇役として出演しており大ヒット作『アメリアン・パイ』にも出演。他に『アメリアン・サマー・ストーリー』、『オーシャン・オブ・ファイヤー』、『ミスト』などに出演しています。
ウィリアム・リー・スコット(ロイ・リー役)
アメリカ人俳優 『バタフライ・エフェクト』、『パール・ハーバー』などに出演しています。
奥さんは女優のシャーリーン・ブルーム。
チャド・リンドバーグ(オデール役)
アメリカ人俳優 『シティ・オブ・エンジェル』、『ワイルド・スピード』、『オールド・ルーキー』、『ラストサムライ』などに出演。他に『ER 』や『Xーファイル』、『CSI:科学捜査班』、『LOW & ORDER:性犯罪特捜班』などの人気ドラマに数多く出演しています。
『遠い空の向こうに』ロケ地は?
実はこの映画の撮影場所は舞台となったコールウッドではなく東テネシーで行われたそうです。
その理由としては撮影の設備を整えるにはあまりに遠く、空港や車、宿泊施設なども足りなかったため。
その点、東テネシーは交通アクセスも良く舞台であるウェストバージニア州の南部によく似た地形で宿泊施設が整っていたということでこの地が選ばれました。
テネシー州ノックスビル・・
ホーマーが1人で挑んだ全米大会の会場があるインディアナポリスのシーン
テネシー州オークリッジ・・
ホーマーたちがロケット作りに必要な資金を稼ぐため廃線になったレールを4人で外すシーン。
テネシー州オリバースプリング・・
コールウッドの中心街などのシーン
テネシー州ペトロフ・・
ホーマーの家のシーン
テネシー州ワートバーグ・・
ロケットの発射場所に使ったケープコールウッドのシーン
その場面によって撮影場所を変えていたんですね。映画のイメージに合う都合の良い場所と言うのはなかなか見つけるのが大変だったでしょうね。改めて映画作りの大変さを知ることができました。
映画と言うのはつい俳優たちに注目が行きがちですがロケ地探しや舞台作りに尽力するスタッフたちの力がなくては映画は成り立たないですね。
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