インディ・ジョーンズシリーズ第一作目『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』
この映画の中心アイテムでもあり、タイトルにも入っている‟アーク”≪聖櫃≫が一体どんなものなのか詳しく説明できる人は少ないかもしれません。
作中でもインディが陸軍情報局の二人に
「ヘブライ人が十戒を納めた聖なる櫃」と言ってますが、あまり詳しくは説明していません。
というわけで今回は
◎レイダース/失われたアークに登場する「聖櫃」とはなんなのか?
◎モーセとはどんな人なのか?
◎十戒とは何か?
◎なぜモーセはせっかく神からもらったその石板を打ち砕いたのか?
◎なぜナチスのヒトラーはあそこまで‟アーク”≪聖櫃≫を欲しがったのか
を解説していきたいと思います!
レイダース/失われたアーク 聖櫃ってどんなもの?
聖櫃の役割とは?
映画の中でもインディが話してましたが「聖櫃」を簡単に説明すると
「モーセが神から授かった十戒が彫られた石板を納めた櫃」
のことで「契約の箱」や「掟の箱」、「約櫃」とも呼ばれます。
ただユダヤ教ではユダヤの教えが書かれたトーラーという巻物を入れる設備のことも「聖櫃」と言います。
キリスト教正教会では聖人の不朽体(遺体)を納めた箱を、
カトリック教会はキリストの肉に聖変化したとされるパン(聖体)を納めた容器を言うそうです。
聖櫃の見た目は?
箱の素材はアカシアの木で作られていて大きさは縦130センチ。 横、高さが80センチ。
箱自体が地面に触れないよう四隅に足が付けられていて持ち上げる時に手を触れないよう棒が付いています。(または棒を取り付ける輪っか)
全体は純金で塗装されていて蓋には高位の天使である智天使ケルビムの像が二体向かい合わせで取り付けられています。
この外観のデザインは神がモーセに事細かく注文したものでしたが、モーセは意味がよく理解できませんでした。
しかし、モーセの孫にあたるベツァルエル(当時13歳)はこれをすんなり飲み込み設計したと言います。
聖櫃の中身は?
聖櫃の中には十戒が彫られた石板が納められているといいましたが、実は入っていたのはこれだけではなく次の二つも納められていました。
アロンの杖
モーセが神の声に従ってエジプトに「十の災い」をもたらしました。
その時使われたのが「アロンの杖」。
アロンとはモーセの実の兄で、度々モーセに代わって神の声を代弁したり神が指示したことを行ったりしていました。
マナの壺
約束の地カナンを求めて40年も荒野を彷徨ったモーセとイスラエルの民が飢えに苦しんでいるとき神が空から降らせたのがマナと言われた食べ物。
週6日降り、7日目の安息日は降らないため前日に倍の量を摂ることを赦されました。
モーセは神の「祝福の証」としてこのマナを純金の壺に入れ契約の箱に納めます。
マナ自体は「白く薄いて蜜入りのせんべいのようなもの」と言われていて、正体は不明ですが、「樹液を固めたもの」、
『昆虫から摂られた甘い体液」、「果物」、「キノコ」などの説があります。
そもそもマナの意味が「これは何だろう?」という意味だそうです。
レイダース/失われたアーク 聖櫃に入れられた石板に彫られた十戒とは?
エジプトから逃げ出せたものの、荒野をひたすら歩き続けたイスラエルの民の間ではなんの決まりもないまま過ごすことに不安が募り争いが起きるようになります。
映画『十戒』でモーセの義父はこう言ってました。
「律法だけでは十分ではない。民が守ってこそ初めて律法と言える。モーセや他の指導者なしでも民が守ることを学ばねばならない。ムチで覚えさせるのではなく、心で学ぶものだ。それが律法だ。民の誰しもがこれを学び守ることが出来て晴れて自由の民となる。これが出来なければ奴隷のままだ。」
モーセは神に律法を求めてシナイ山へと登ります。
すると神はその声に答え、石に十の戒律を記しました。
これが石に刻まれた「十戒」です。その内容は
①「あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。」
②「あなたは、自分のために、偶像を造ってはならない。」
③「あなたは、あなたの神、主の御名を、みだりに唱えてはならない。」
④「安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ。」
⑤「あなたの父と母を敬え。」
⑥「殺してはならない。」
⑦「姦淫してはならない。」
⑧「盗んではならない。」
⑨「あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない。」
⑩「あなたの隣人の家、隣人の妻、家畜を欲しがってはならない。」
神が与えてくれた決まり事なら人々は守ろうとするし、それがあるおかげで安心できるということですね。
ご覧になってわかる通り
①~⑤は神様との契約。
⑥~⑩は人と人との契約
になっています。
後者の契約を見てみると当たり前のことのように思えますが、そんな当たり前のことでも守ることができないのが弱い人間というもの。
神様を心から信じる人が少なくなった現在の方がこんな当たり前の規則を守れない人が多いかもしれませんね。
レイダース/失われたアーク モーセが石板を砕いた理由は?
映画の中でインディが陸軍情報局の二人に
「モーセがシナイ山から‟アーク”を持って下りて打ち砕き、ヘブライ人は‟アーク”の中にその破片を集めエルサレムの神殿に納めた。」
とも話していましたが、ではなぜモーセはせっかく神様から授かった石板を砕いてしまったのでしょう。
それはモーセがシナイ山に十戒を授かりにいっている間、イスラエルの民が30日を経過しても帰らないモーセがもう死んでしまったのでは?と不安になり
心の拠り所として祈る対象(金の子牛の像)を作り、それに祈りを捧げた
というのが理由でした。
これは上記した神様が決めてくれた戒律
①「あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。」
②「あなたは、自分のために、偶像を造ってはならない。」
に反する行為です。
モーセが帰って来るまで知らなかったんだからしょうがないんじゃ?と思うかもしれませんが、モーセがシナイ山に登る前に神様はモーセと民にちゃんと十戒の内容を伝えていました。
やってはいけないこととわかっていたにもかかわらず、神様とモーセを信じ切ることが出来ずに行ってしまった行動だったのです。
シナイ山から降りてきたモーセはこれを見て怒り石板を地面に叩きつけ砕いてしまったというわけ。
しかし、モーセは神の赦しを乞うためもう一度シナイ山に登りまた十戒が彫られた石板をもらってきているんですよね。
だからインディが作中でなぜ「破片を集めて聖櫃に納めた」というようなことを言っていたのかちょっと疑問です。
レイダース/失われたアーク モーセはどんな人生を歩んだ人?
モーセはヘブライ人(イスラエル人)の子供として生まれますが、ちょうどその頃人口が増えたヘブライ人に脅威を感じたファラオがヘブライ人の人口が増えないためにその頃生まれたイスラエル人の初子をみんな殺すよう命令を出しています。
そのため自分の子を殺されると思ったモーセの母は幼いモーセを籠に入れナイル川に流します。
そしてそのモーセを水浴びをしていたファラオの娘が拾いモーセと名付け自分の養子として育てました。
その後成長したモーセでしたがある日イスラエル人を殴っているエジプト兵を見かけるとそのエジプト兵を殺してしまいます。(自分の本当の家族のことや自分の素性は知っていました。)
そして逃げた先でたどり着いたミデアンという地でエテロに出会いその娘チッポラと結婚します。
40年という月日が流れた頃、羊のエサを探しにホレブ山を登っていたモーセはそこで燃え尽きることのないシバの木を見つかます。
不思議に思い近づいてみるとそこから神の声が聞こえてきました。
「それより近づいてはなりません。サンダルを脱ぎなさい。あなたは聖なる場所に立っているからです。」
そしてその声は続けてこう言いました。
「わたしはわたしの民がエジプトで苦しんでいるのを見ました。それで民を解放しようと思います。そしてあなたはわたしの民をエジプトから導き出すためにわたしが遣わす者です。」
そんな神から言われた言葉をモーセは「誰が自分を信じてくれましょうか?」と受け入れることができません。
そんなモーセに神は「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神エホバがわたしを遣わした、と言いなさい。これはわたしの永遠の名前です。」
言い、持っていた杖をヘビに変え、布に入れた腕を真っ白な病気のような腕に変える奇跡を見せ、モーセにもこの力を与えます。
「このような奇跡を行うなら、イスラエル人はわたしがあなたを遣わしたと信じるでしょう。」
そういわれたモーセはエテロにいきさつを話し、エジプトへと向かいます。
モーセは兄のアロンも引き連れエジプトのファラオに奴隷となっているイスラエル人たちを解放するようにと願い出ますが、
当然ファラオは受け入れません。
そこでモーセは神から譲り受けた力で杖をヘビに変える奇跡を見せますがファラオに仕える呪術師も同じように杖をヘビに変えて見せました。
頑ななファラオにモーセは「十の災い」である
①ナイル川の水を血に変える。
②カエルを放つ。
③ぶよをはなつ。
④虻をはなつ。
⑤家畜に疫病を流行らせる。
⑥腫れ物を生じさせる。
⑦雹を降らせる。
⑧バッタをはなつ。
⑨暗闇でエジプトを覆う。
⑩長子を皆殺しにする。
をエジプトにもたらします。
自身の息子も失ったファラオはとうとう折れ、奴隷を連れていくことを赦します。
イスラエルの民を引き連れたモーセは神が示されたルートで約束の地カナンを目指し海へと辿りつきますが、あきらめきれなかったファラオが軍をだしモーセたちを追って来ていました。
行き場を失ったモーセが神に祈ると目の前の海が割れ道ができます。
神の奇跡に民たちが喜び急いで渡っているとエジプト兵たちも後を追って海を渡ってきます。
しかし、モーセたちが渡り切ったそのとき海は元に戻りエジプト兵たちは飲み込まれてしまいました。
エジプトの手を逃れることが出来たモーセとイスラエルの民はある日神の声で10の戒律を耳にします。
そしてモーセはヨシュアを連れその十戒を授かるため民たちに身を清めてまっているよう伝え、シナイ山に登ります。
しかし、30日経ってモーセは帰らず死んでしまったのではと不安になった民は祈る対象である金の子牛の像を作りそれに祈りを捧げてしまいます。
十戒が彫られた石板を持ち帰ったモーセはそれを見て怒り、石板をたたき壊してしまいます。
そして自分を信じられないという者たちをヨシュアに殺させ、「金の子牛の像を砕きそれを水にといて飲み苦みを知りなさい。」と言い残し、再びシナイ山へ神に許しを乞いに行きます。
そしてまた十戒が書かれた石板を持ち帰ったモーセは智天使が上部に施された金の聖櫃に石板を納め旅の道中持ち運びます。
それから40年・・。
ついにカナンの地を目の前にしたモーセはヨシュアに後を任せカナンを一望できるモアブの地、ピスガの山頂、ネポ山で一生を終え神によってモアブの谷に葬られました。
その年120歳。
イスラエルの民は30日間その死を悼み喪に服しました。
レイダース/失われたアーク 聖櫃をナチスが欲しがった理由とは?
『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』はナチスとインディたちが‟アーク”を奪い合っているわけですが、ではなぜナチス、つまりヒトラーは‟アーク”をこんなに多くの人間を総動員してまで欲しがったのでしょう。
情報局員の言う通り、ただのオカルト好きだった可能性もあります。しかし
映画の冒頭、またまた大学で陸軍情報局の二人とインディたちが話しているシーンでインディの友人でもあるマーカス・ブロディがこう言います。
「聖書によれば、‟アーク”は山をも覆し、肥沃な土地を荒野に変え、‟アーク”を掲げる軍隊は・・無敵でした。」
おそらくこれがヒトラーが‟アーク”を欲しがった理由だと思われますが、実際聖書には‟アーク”自体にそのような力があるとは書かれていません。
しかし、モーセが亡くなりヨシュアが新たな指導者になったあと今度はカナンの地を手に入れるため、そこに住んでいた者たちとの戦いが始まるんです。
(カナンに着いて終わりではなかったんですね。)
その戦いでヨシュアとイスラエルの民たちは神の力を借り、まずエリコという町を、そして次はアイという町を奪うことに成功し、最終的に
エルサレムの王、べブロン、ヤルムト、ラキシュ、エグロンの王など計31もの地の王をたおし、ようやくカナン全土を制覇しました。
まさに向かうとこ敵なし、といった感じですね。
そして‟アーク”はその後建てられたソロモン神殿に安置されます。
この出来事からヒトラーは‟アーク”を持っているものは無敵と思ったのかもしれません。
でも本当は‟アーク”の力ではなく‟神”の力なんですけどね。
『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』に登場する聖櫃についてやモーセ、十戒、モーセが石板を砕いた理由、そしてナチスが聖櫃を欲しがった理由を解説していきました。
インディ・ジョーンズという映画がアドベンチャー映画として十分面白いのでこんなとこまで知る必要はないし、映画の見どころもここではないかもしれませんが、ちょっとした豆知識として知っておくのもいいんじゃないでしょうか。
それで友達とインディ・ジョーンズの話になったとき、この辺のことをチラッと話したりしたらちょっとカッコイイかもしれませんよ。
旧約聖書の人物のことまで知っている人は少ないでしょうからね。
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